虹の橋の向こうにいる「さくら」ちゃんへの手紙

標準

sakura「さくら」 ちゃん。
保護されたあなたが国立市へ、我が家へ幸せを探しにやってきたのは、去年の 3 月のことでしたね。

あなたはカフェオレのような毛色をした、黒い瞳の大きな、とてもきれいな巻き毛の女の子でした。

あなたはとってもかわいい子だったから、きっとあなたの里親になりたいと、たくさんの方からお申し込みが入るだろう、って、ボランティア仲間たちと喜んだことを覚えています。

既に新しいおうちで幸せな生活を始めていたあなたの仲間たちのように、人間の家族に大切に守ってもらえる生活を楽しんでほしいな、と、私たちみんなが願いました。

みんなで相談して、新しいおうちでプレゼントしてもらえるお名前が決まるまで、あなたを 「さくら」 ちゃんと呼ぶことに決めました。

春になれば、国立の街を夢のようなピンク色に染めてくれる桜の花。
住む人も、訪れる人も思わず笑顔にしてくれる花のように、あなたも新しいおうちでたくさん、たくさん愛されてほしいと願いました。

でも、その願いがかなえられることはありませんでした。

あなたはあまりに急に、国立市の桜が花開くのを目にすることもないまま、虹の橋の向こうに旅立ってしまいました。

動物病院で検査をしてもらったときも、何ともなかったのに。
元気に牧草もペレットも食べてくれていたのに。
お部屋でのお散歩も、楽しそうにしてくれていたのに。
排泄もきちんとしてくれていたのに。

朝、いつものようにお野菜を食べに出てこないあなたが心配になって、隠れ家を覗き込んだら、あなたは向こうを向いたまま横たわっていて。

「どうしたの?」 ってあなたの体に触れたら、もう、命のぬくもりは完全に消え去ってしまっていた。

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あなたが保護されるまで。
屋外での暑さ寒さの中での生活、食べるものさえ仲間たちと争わなくてはならなかった日々。
そして栄養が足りない中での妊娠と出産。

何とか赤ちゃんを産むことはできたけど、もう体力が限界だったのかな?
保護されてからは元気に過ごしてくれているように見えても、辛かったのかな? 苦しかったのかな?

赤ちゃんが目も開き、歯も生え、毛が生えそろった状態で生まれてくるモルモットの出産は、そうでなくても命がけ。

野生では、他の動物に食べられてしまう存在のあなたたちだから、お母さんの体が犠牲になってでもたくさんの赤ちゃんを産もうとする。

でも、あなたは 「野生動物」 じゃなかったのに。

愛そう、可愛がろうと思ってあなたのお母さんかお父さんかが 「購入」 されたことがすべての始まりだったのに。

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「さくら」 ちゃん。
あなたと一緒に保護されたモルモットたち、あなたの家族たちには、みんな人間家族ができました。

「新しい門出だから」「辛かった生活のことは忘れて、幸せになってもらいたいから」 って、新しいお名前をもらった子もいます。

「これまで呼ばれていたお名前がわからなくなってしまうと可哀想だから」「きっともうお名前を覚えてると思うから」 って、ボランティアたちがつけたお名前が「ずっとのお名前」になった子たちもいます。

みんなのことを、「さくら」 ちゃんがお空から見守って、応援してくれていたのかな?
それとも、「どうして私には、『ずっとのおうち』が見つからなかったの?」 って、悲しく思ってしまっていたかな。

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ごめんね。

あなたをもっと早く助けることができていたら、今頃あなたも優しい人間家族に、あなただけのお名前を呼んでもらうことができていたかもしれないのにね。

私たちでは、あなたの家族になってあげられませんでした。

暖かい静かな場所やきれいなお水、おいしい牧草にペレット、隠れることのできる場所は、少しの間だけでもあなたに提供することができました。

獣医さんにも行きましたね。先生も看護師さんも、とっても優しくお耳やお口、お腹を診てくださいましたね。
「可愛い!」「いいご家族にもらわれてくれるといいですね」 って、皆さんおっしゃってくださいましたね。

でも、それだけでした。
私たちは所詮 「保護ボランティア」。あなたの本当の家族になることはできませんでした。
一生懸命お世話をした 「つもり」 だったけど、きっと至らないところもあったでしょう。

本当にごめんなさい。
私たちがあなたにプレゼントできたものは、仮の名前と、そしてわずか数週間の室内での暮らしだけでした。

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「さくら」 ちゃん。
「もう一度生まれ変わって、私たちに会いに来てね」 なんて言いません。
家族になることができなかった私たちには、そんな資格はきっとないのだから。

たったひとつしかないあなたの命を、取り換えのきく 「モノ」 のように扱った人間たちが支配する世界になんて、戻ってきたくないかもしれませんね。

でも、もしあなたが、もう一度モルモットとして、モルモットでなくても 「ペット」 として、この世界にやってくることがあったら。

そのときは、あなたが少しでも幸せに、平和に暮らすことができる世界にしたい。

「可愛いから」「世話が簡単そうだから」「一目惚れ」と衝動買いされ、適切なお世話を受けることのないまま命を縮められてしまう子たちや、「飽きたから」 と捨てられ、無残な死を迎える子たちがなくなる世界にしたい。

あなたたちの可愛らしさだけでなく、お世話の難しさも、あなたたちとの幸せな暮らしにはお金も手間もかかることも、人間たちがきちんと知った上で、あなたたちをお迎えするような社会にしたい。

そして、安心して暮らせるおうちをなくしてしまったモルモットたちを、心から大切にしてもらえる 「ずっとのおうち」 に送り届けてあげたい。

そのために頑張ることが、私たちがあなたにできる、唯一のことだと思っています。

+++

「さくら」 ちゃん。
少し前、人間に見捨てられてしまったモルモットたちが、また我が家にやってきました。
あなたと同じように、必死で赤ちゃんを産んだお母さんたちもいます。
小さな体で、みんな必死に戦っています。生きよう生きようと戦っています。

どうか、みんなを見守ってあげてね。応援してあげてね。

この子たちがみんな、新しいおうちで、かけがえのない存在として愛されることができるように。

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「さくら」 ちゃん。
あなたの「ずっとの家族」を見つけてあげられなくて、もっと早くに助けてあげることができなくて、本当にごめんなさい。
短い間だったけど、あなたと過ごせた時間のことは、ずっと忘れません。

「さくら」 ちゃん。
あなたが名前をもらった国立市の桜は、もうすぐ満開を迎えます。
お空からあなたも見ているかな?

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