看護という「贈り物」 – 病気・老齢のモルモットと暮らすということ

標準

pexels-photo-597657モルモットに限らず、動物とと暮らす上で避けて通れないのが「介護」「看護」の問題です。

モルモットは犬猫に比べてペットとしての歴史が浅く、まだまだ病気・生態・接し方等については研究しつくされていない部分も多いため、高齢になってからのケアや病気の看護については未知の部分が多くあるのが実情です。

また、加入できるペット保険も少なく、きちんと診察してもらえる病院も非常に限られているため、病気になってからのケアには多額のお金や多くの時間が必要となることも少なくありません。場合によっては、犬猫の看取りよりも負担が大きいことがあるほどです。

しかし、「介護」「看護」をただ苦しいこと、悲しいことと捉えるのではなく、モルモットという生き物と暮らす上での、かけがえのない経験のひとつと考えることで、モルモットとの生活をより深く経験し、共に暮らすモルちゃんとの絆を深めることもできます。

今回の記事では、保護ボランティアとして、また先住モルモットたちの看護・介護を通じて経験したことについて、個人的な見解をまとめてみました。


【いつかはやってくる「老い」】
モルモット保護ボランティアという役割上、看護・老いてからのケアについて多く考え、また触れる機会も多く与えられます。

pexels-photo-339620モルモットの寿命は5年から7年といわれていますが、何の病気もせず10年近く生き、眠るように亡くなる子もいれば、1歳未満から先天性の病気で投薬・通院を続け、まだまだ幼齢のうちに天国に旅立ってしまう子もいます。

しかし、命がいつか尽きてしまうこと、お別れが10年以内にやってくるのは、どのモルモットにも共通しています。

pexels-photo-262218愛らしい姿やおどけたしぐさ、「うちの子」「うちの息子ちゃん・娘ちゃん」という呼び方に惑わされてついつい忘れてしまいそうになりますが、モルモットたちは人間の数倍・数十倍のスピードで生き、老い、旅立っていきます。

年齢を重ねれば、若齢のときよりは体調も崩しやすくなりますし、足腰も弱くなったりしてケージ設備を変える必要も出てくることもあります。

愛するペットたちが衰弱していく姿を見るのは悲しいことでもありますが、人間よりもはるかに寿命の短い生き物と暮らし、愛情や笑顔、楽しい経験というプレゼントを毎日受け取っている人間が覚悟し、受け入れ、また準備しておくべきことでもあります。

【モルモットの看護や介護は大変です】
pexels-photo-66757言うまでもないことですが、愛情を注いで一緒に暮らしてきた動物の体調不良や老化現象を目の当たりにし、介護するのは辛いことです。

寿命の短さや病気の大変さについて頭で理解はしていても、いざ自分の愛モルちゃんが病気になったり、老いからくる体調不良になったりすれば、取り乱したりパニックになったり、「もうお別れなのか」と悲しみに沈んだりすることもあります。

また、何とか回復したとしても、診てもらえる病院が少ないだけに、検査や手術などは高額になることも多く、場合によっては一か月に5万・10万単位でお金が飛ぶことさえ決して稀ではありません。

そして、草食動物(=野生ではほかの動物に食べられてしまう存在) であるモルモットは、いったん命をとりとめたとしても、病気からの回復や看護には非常に長い時間がかかることもあります。

病気の種類によっては、数時間おき(もちろん夜通し)の強制給餌や投薬、マッサージ、自宅での点滴などが必要になります。

meds投薬も、点滴も、慣れるまでは本当に大変です。

個体差はありますが、投薬や補液の好きなモルモットはまずいません。

当たり前ですが、怒りを込めて鳴きますし暴れますし怒ります。飼い主さんを噛む子もキックする子もいます。

「信頼関係がなくなった」「嫌われた」と落ち込む飼い主さんもたくさんおられます。

しかし処置をしなければよくなることもありませんし、「嫌われたくないから」「無理」と処置をしなければモルちゃんの体調はどんどん悪化していきますので、大切に思えばこそ心を鬼にして処置をするか、あるいは毎日のように時間とお金を使って動物病院に点滴に通うか、どちらかを選択することになります。

保護ボランティアが、里親さんとのお話の際に「モルモットを診察可能な病院は近くにありますか?」「老齢になってからのお世話や、看病や看取りはほんとに大変です」と(場合によってはしつこいくらいに)お伝えするのは、このためです。

繰り返しますが、モルモットの介護は、はっきり言って大変です。体が小さいからといって、犬や猫やウサギよりも楽であるということは絶対にありません。

それでも。介護という経験も、老いたモルモットと暮らすという経験も、かけがえのない大切な経験、「贈り物」なのではないかーそう私たちは考えています。

【介護・介護で深まる「絆」】
・老いてからのケア
peach_house01当方の先住モルモットには比較的高齢でお迎えし、1年もしないうちに見送ることになった子がおりました。

一緒に過ごすことができた時間は、たった9か月でした。

しかし、今思い返すと、何と幸せな9か月であったことかと思うのです。

地元でモルモット診察可能な病院を探しておき、お迎えした翌日から健康診断に行きました。

獣医さんも看護師さんも「かわいい子ですね!」と笑顔でお迎えしてくださり、ちょっとした体調不良のときも、呼吸がおかしくなるなどの重篤な状態のときも、熱心に治療・看病してくださいました。

年老いてからお迎えしたためか性格も穏やかで、好みもはっきりしていたため、自分の好きなことと嫌いなことをしっかりと当方に伝えてくれました。

若いモルモットのように、毎日元気にはつらつと走り回ったりすることはありませんでしたが、それでも部屋んぽや抱っこは大好きでしたし、好奇心も旺盛でした。

大好きなお昼寝スポット(ドッグサークルの隅)で足を投げ出して横たわり、フリース布団の上で悠々と寝そべって満足そうな表情を浮かべていました。

季節の変わり目には体調を崩しやすかったのですが、定期的におなかのなでなでマッサージや下半身を動かす刺激運動をしてあげると、少しは快適に過ごせるようにもなったようでした。

pexels-photo-325265狭いところでずっと飼育されていたためか、足の骨も変形してしまっていましたが、広いスペースでいつでも運動できるようなバリアフリー環境を整えたところ、積極的に歩き回って摂食量も増え、獣医さんからも「筋肉がついてきましたね」「毛並みがよくなりましたね」とおほめにあずかることさえありました。

いよいよ体調が悪化して厳しい状態になり、朝一番に病院に駆け込んだとき、先生に抱っこしていただいたときに先住モルモットが浮かべた笑顔のことは、おそらく一生忘れられません。「ああ、先生だ!先生のところに来たからもう大丈夫」、そう思っているかのような、心から安心した笑顔でした。

その日の夜には旅立ってしまったのですが、いつも通いなれた病院で、彼女のことをよく知っている大好きな先生と看護師さんに適切な治療をしていただき、苦しさも少しは和らげていただくことができたのではないか…今でもそう思っています。

pexels-photo-132037共に過ごせた時間はたった9か月でしたが、獣医さんや看護師さん、保護ボランティア仲間に助けられ、周囲の人と、また飼い主と強い強い絆を結んだ彼女に、生命の終わりの時間を穏やかに、安らかに過ごしてもらうことができて、本当によかったと今では心から思えます。

後悔がないかと問われれば、「たくさんあります」と答えるしかありません。もっとしっかり準備していればよかった、知識がもっとあればよかった、という後悔は尽きませんし、これから尽きることもおそらくないでしょう。

しかし、何もせずに見ているだけ、ただ苦しみながら命が尽きていくのを眺めているだけ、という事態は避けられましたし、安心できる状態で苦しみを和らげることもできたのではないか、とも思います。

・看護
当方には先天性の疾患のため、エキゾチック専門院に定期通院しているモルモットもおります。

効果的な治療・完全な回復が難しい病気で、今まで何度も「覚悟してください」といわれる状態となりましたが、そのたびに専門院の先生方や看護師さんに生還させていただき、小康状態を保ちつつ現在に至ります。

pexels-photo-263402毎日二回から三回の投薬、強制給餌、状態によっては自家点滴と、彼女にとって決して楽な生活ではないはずなのです。

「遠くまでの通院もかわいそうだし、そこまで無理していろいろしないで、もうそっとしておいてあげたら?」と、モルモット飼育仲間に提案されたこともあります。

しかし。
通院のたびに嬉しそうに先生や看護師さんに甘える姿。
投薬や通院のあとに居住スペースに返すとトコトコと探検し、ひとしきり遊ぶと満足げに横たわる姿。
シロップのお薬が入ったシリンジに目の色を変えて飛びつく姿。
補液のあとしばらくブンムクレ状態になりながらも、しばらくすると野菜につられて隠れ家から飛び出し、嬉しそうにパプリカやレタスを頬張る姿。
こんな姿を見ると、彼女はまだまだ頑張りたいはずだ、とも思えるのです。

投薬も強制給餌もすっかり慣れているためか、投薬の時間になると自分から「あの甘いお薬!」と立ち上がり、要求することさえあります。

pexels-photo-533360強制給餌や投薬の際は、本モルモットの飲みっぷりや食べっぷり、口の動かし方をよく見ながら行うのですが、これも彼女のペースを見つつこれまで投薬・給餌してきた経験、そして先生がたや看護師さんに正しいやり方を教えていただいてきた経験があればこそのことです。

彼女もそれを理解しているのか、背中やおなかをあたためる治療の際にはヒートパッドを自分で動かすか、あるいは自分自身が移動し、最も心地の良い場所にパッドを当ててうずくまっています。

強制給餌も、自分が食べたいと思う量を食べると、「もういらないから」とシリンジを鼻で押しやってくれます。(もちろん投薬の場合は、嫌がろうが何だろうがしっかり必要量を飲ませることが重要ですが)

このようなコミュケーションを絆と呼ぶか、飼い主側の観察眼の向上と呼ぶかは人それぞれでしょう。

しかし、わがままで気まま、好みがはっきりしている彼女が、自分の意志をこちらに伝えてくれるからこそ、またそのシグナルの読み取り方を信頼できる獣医さんに教えていただいているからこそ、このような接し方も可能になっているのだろうとも自負しています。

【「闘病の同行者」としての動物病院、「実行者」としての飼い主さん】
pexels-photo-691637これまで書いてきたようなことは、生活の質や幸せな暮らしのことを気にかけ、彼女に一番良い治療方法・方針を模索してくださる動物病院の主治医の先生や、スタッフの皆様がいらしてこそ継続してこれたことだとも思います。

つい最近、先天疾患持ちのモルモットが手術をするかしないか、という選択を迫られた際も、主治医の先生は、これまで彼女を診てこられた上での彼女の性格や、飼い主と彼女との関係性などまで考慮に入れ、保護ボランティアを続ける上で感じたことなどまで含めた当方の意見もしっかり取り入れてくださって、決断を下すお手伝いをしてくださいました。

そして、愛モルちゃんにとって最適な治療や環境を用意してあげるためには、飼い主さん本人の自主的な勉強や積極的な行動、学び続ける謙虚な姿勢が何より必要です。

いくら世界最高峰の獣医さんに最高の治療プランやお薬を用意してもらったとしても、飼い主さんがそのプランを全く実行できない・投薬をしない、あきらめてしまうようでは何の意味もありません。

pexels-photo-262140「この子は病気だから治してください、獣医なんだから何とかしてください!」と丸投げして頼り切ることはできません。投薬をするのも見守るのも、もっと言えばその状態まで一緒に暮らしてきたのも、これから一緒に暮らして治療に責任を持つのも、飼い主さんだからです。

また、草食動物であり、もともと強いストレスに耐えて生き延びるような体の構造をしていないモルモットの治療には、かなり長い時間がかかります。

「まだ全然治らない、こんなに投薬を頑張っているのに」「なんで良くなってくれないの」とフラストレーションを感じることもあるかもしれませんが、そこは人間のペースで考えず、モルちゃんの回復力を最大化してあげられるように飼い主さんが気長に見守ってあげることが大切です。

モルモットにはモルモットの体力、回復のペースがあります。人間のペースに合わせて都合よく回復してくれるわけではありません。

そして、回復が本来よりも遅いように感じるのであれば、その心配を獣医さんに共有し、今後の治療プランや予測される回復のペースについて、しっかりと質問することが大切です。

ネットや飼い主コミュニティ、知り合いなどから聞きかじった生半可な情報を鵜呑みにし、勝手に治療を中断したり別の薬やサプリメントなどを追加したりすれば、やはり効果的な治療を行うことは難しいでしょう。

いくら知識の豊富な飼い主さんでも「モルモット飼育仲間」でも、今苦しんでいるモルちゃんを目の前にしていない、それまでの状態も知らない/飼い主さん経由での情報しか知らない以上、そして何より獣医療関係者でない以上、他の人の愛モルちゃんを的確に「治療」「診断」することはできません。

pexels-photo-249348一見同じように思える症状でも、病院で検査しないと原因も、どのような治療をすればよいかも知りようもありませんし、良かれと思って実施した処置が命取りになることさえあります。

そして、「この病院では真面目に受け取ってもらえない」「この先生は信頼できない」「この病院ではモルモットの治療ができるようには思えない」と感じるのであれば、信頼できる先生や病院を見つけるのも、やはり飼い主さんの責任です。

どんなに評判の良い病院でも、飼い主さんやモルちゃんとの相性が悪ければ効果的な治療はできないでしょうし、何より飼い主さんに悔いが残ることでしょう。

容体が急変してから大慌てで病院を探して駆け込み、いざ治療に納得がいかないとなっても、その時点で次の病院を探すのでは手遅れになることも多いですし、次の病院がモルちゃんや飼い主さんに合った病院であるかどうかは完全にギャンブルになってしまいます。

しかし逆に、日頃から納得できる治療をしていただいているのであれば、エキゾチック専門医院でなくても、愛モルちゃんにとって最高の環境での介護や看護を受けることも可能でしょう。

pexels-photo-541520だからこそ、信頼できる獣医さんや動物病院を見つけることは、必ずやってくるモルちゃんへの介護・看病にとって非常に大切なことなのです。

言うなれば、モルちゃんとの生活がひとつの長い旅路であるとすれば、信頼できる動物病院は、看護・介護生活や老いてからの生活に寄り添い、的確なアドバイスをくださる、心強い「同行者」「並走者」となります。

しかし、治療やターミナルケア(終末期のお世話)を実行する、モルちゃんに寄り添って旅をするのは、あくまで飼い主さんです。

並走者に任せたり、「もう無理」と途中で投げ出したりするのではなく、自分がベストだと思った道を自主的にともに歩んでいくことが必要ですし、だからこそモルちゃんとの強い絆を築くこともできるのではないでしょうか。

【おわりに – 看護という「贈り物」】
clasped-hands-comfort-hands-people-45842当方の先住モルモットはエキゾチック専門医院に通いつつ、長く闘病生活を送っています。

これまで書いてきたとおり、決して楽な道のりではありません。

それでも、彼女の幸せやQoL(生活の質)、エンリッチメント、性格まで織り込んで丁寧に治療プランを組み、飼い主の積極的な学習・観察を時に厳しく、時に優しく促してくださる主治医の先生や病院スタッフの皆様、職場の仲間たちや友人たちからのサポート、そして今は「モルモット仲間」として当方の活動を支援してくださっている元里親の皆様など、いろいろな方に支えていただいているからこそ、絶望もせずに前進することができているのではないか、とも思います。

しかし、何よりの介護の原動力になっているのは、先住モルモット本動物の頑張りです。

つい最近も元里親様に先住モルモットの状態が安定したことをお伝えしたところ、「きっと、飼い主さんを元気づけたいと思って、まだまだ頑張ってくれてるんですね」とのお言葉をいただきました。

ご自身も、モルモットをお迎えされる前にはご家族全員でワンちゃんを1年近く介護されていただけに、心にしみるお言葉でした。

california-road-highway-mountains-63324また、最近ご自身の動物家族を見送られたある獣医療関係者さんが「看護させてくれるって、本当はすごく素敵なことなんですよね」と、ぽつりとおっしゃっていたことも忘れられません。

聞けば、一緒に暮らしておられた大切な動物家族さんは、若齢といわれる年齢で突然発病され、あまりに急に旅立ってしまわれたとのこと。

モルモットに限らず、動物医療にはまだまだ未知の分野がたくさんあり、獣医さんにも看護師さんにも、経験を積んだ保護ボランティアにもまだわからないこと、理解できないことはとても多いのです。

本来ならば動物たち、特に草食動物たちはその性質上、苦しみや痛みを極限まで隠し、突然旅立ってしまうことのほうが普通であるのかもしれません。

しかし、弱っていく・苦しむ姿を飼い主さんに見せてくれること、そして飼い主さん側もそのシグナルを見逃さずに適切な処置をすることで、命が助かること・もっと快適に、苦痛なく生活できるようにしてあげられるチャンスを与えてもらったともいえるのではないでしょうか。

急速に進行する病気や、先天性の疾患であれば、そんなチャンスさえ与えられずに見送るという事態も起こります。

attractive-1867127_960_720「ついさっきまで元気だった子が、もうここにいない。

あんなにたくさんのものを与えてくれた子に、何もしてあげられずに突然お別れすることになってしまった。

もう一度チャンスがあれば、手を尽くしてお世話するのに、何時間でも起きて寄り添うのに…。」

看取りまでの時間が短かった飼い主さんから、よくお伺いするお気持ちです。

毎日愛らしい姿や鳴き声、楽しいしぐさ、もっと言えば存在そのもので飼い主さんを力づけてくれる存在である動物家族たち。

その愛情にこたえる、落としてしまった体力や気力を飼い主さんの励ましや頑張りで取り戻す手伝いをするという行為や、長く生活をともにしてくれたその終わりに、少しでも楽に毎日を送れるように心がける行為が看護や介護であるとすれば、それは飼い主さんから動物たちへの何よりの贈り物であるともいえます。

pexels-photoまた、動物たちが飼い主さんと一緒にまだまだ暮らしたい、頑張りたいと感じているからこそ、本来であれば簡単に命をなくしてしまうはずの動物たちも、機会を与えられれば少しのチャンスに必死でしがみつき、この世界にとどまろうとしてくれる、ともいえるかもしれません。

モルモットたちが「生きたい」と思ってくれるのなら、飼い主さんは大切なモルちゃんたちが最も快適に、苦痛なく回復できるよう、もしくは最も快適に過ごせる状態を保てるよう、可能な限りサポートしてあげたいものですよね。

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