100点の日も、20点の日も: モルモットの介護・看病に向き合うということ

標準

worried-girl-413690_960_720医療情報の入手がなかなか難しいモルモットという動物の保護ボランティアという立場上、また愛玩動物飼養管理士という立場上、医療相談や飼養相談をお受けすることがしばしばあります。

保護ボランティアとしては、「当方から巣立ったモルモットたちとそのご家族を、この世界から旅立つまでずっとサポートします」という理念(「お約束」)のもと、闘病中のモルちゃんとそのご家族をサポートすることもあります。

久しぶりの更新となりました今回の記事では、先住モルモットの数年にわたり、現在も進行中の闘病を通じて、また闘病中のモルちゃんの飼い主様たちのサポートをさせていただいた経験から、感じたことを書いてみたいと思います。

【はじめに・飼い主さんへの心のケアはなぜ必要か】
当方からお迎えになった子でなくとも、当方からお迎えいただいた子の動物家族ですから、あるいは苦しんでいるモルちゃんですから、力が及ぶサポートさせていただきます。

また、私どもも、3年以上にわたって闘病を続けている、慢性疾患を多く抱えたモルモットの飼い主でもあります。

writing-notes-idea-conferenceこのような立場から、強制給餌・お薬の飲ませ方のサポート、手術後のケアのお手伝い、飼養環境の整備など、様々な側面からご相談を受け、また当方からも発信をしています。

もちろん私自身は獣医療関係者ではなく、知識の面でも実技の面でも、尊敬するエキゾチック専門クリニックの先生やスタッフの皆様には遠く及びもつきませんが、少しでも飼い主様・モルちゃんたちのお力になることができれば…との思いから、日夜知識習得に励んでいます。

…と、このような勇ましく書き出してみましたが。

飼い主様のサポートを行うことが増えるにつれ、「一番有効な闘病サポートは、たぶん飼い主さんのメンタル面でのサポートなんだろうな」と感じることが非常に多くなりました。
特に慢性疾患・原因不明の疾患で、根本的な治療が難しいモルちゃんの飼い主さんには、最も大切なのは「長期的な心のケア」なのではないか、という気がしてなりません。

【モルモットの介護・闘病はどうしてこんなに大変に感じるのか】
pexels-photo-935777どうしてなのかと言いますと。
我が家のモルモットもそうなのですが、何せ慢性疾患なので、治療に「ゴール」が設定しづらいのです。

特にモルモットの場合、ウサギに輪をかけて麻酔に弱いせいで手術が難しく、「体力に賭けて手術をしてみる」という決断が下しにくいため、飲み薬や塗り薬、目薬などでの根気強い治療が中心となります。

例えば、モルモットによくある疾患の一つである不正咬合は、一度処置して終わりではなく、数週間から数か月に一度治療して歯を切ることが必要になってくるため、これも飼い主さんの根気強さが必要となります。

pexels-photo-1076999長期間闘病をしていれば、飼い主さんの人生にもいろいろあります。
仕事でミスをするかもしれません。人間関係で嫌なことがあるかもしれません。
彼氏や彼女と思いがけず破局したり、家族の看病や介護をしなくてはならなくなるかもしれません。
金銭的な悩みが出てくるかもしれません。
楽しみにしていたケーキを家族が食べてしまっているかもしれません。

しかし、どんなに嫌なことがあっても、ボロボロに疲れていても、モルモットの治療や投薬は待ってはくれません。
朝寝坊したくても、外泊したくても、遊びに行きたくても、投薬や強制給餌を替わってくれる人がいなければ、諦めるしかありません。

しかも、相手は非常に繊細な体をしており、闘病や疾病発生のメカニズムにまだ不明点の多いモルモットです。
すんなりと回復してくれることも多いですが、こじれると脂汗をかくほど大変です。

【長期化する闘病・介護、そして飼い主さんの孤立】
pexels-photo-191139それに加え、食に敏感 (何かのきっかけで食べなくなることも多々ある)、抱っこ嫌いな子が意外に多い (保定や投薬、強制給餌が難しい)、気が小さい (通院ストレスが強い子が多い) とあっては、なかなか「心配は全くなくメキメキと回復!」という状態にはなりにくいのが現状です。

「好きでお迎えした動物なのだから、しっかり面倒を見るべき」という意見は確かに正論なのですが、そうはいっても先の見えない治療が飼い主さんの負担になることは疑いようもない事実ではないでしょうか。

闘病が長期化し、心身ともにお疲れの飼い主様からは、

「こんなにお薬もあげて病院にもきちんと行ってるのに、どうして良くなってくれないんだろう…」
「私は飼い主として駄目なんでしょうか」
「良くなってくれないうちの子にイライラしてしまいます」
「モル友さんたちはみんな楽しそうにモルライフを満喫してるのに」
とのお言葉を聴くことも、実は少なくありません。

飼い主さんのお疲れや我慢がいつの間にか堆積していて、爆発寸前になっているケースも少なくありません。
モルモットも辛いですが、なかなかトンネルの先が見えないまま治療を続ける飼い主さんも辛いものです。

【「モルモットなんかに」という言葉、そしてさらなる孤立とイライラ】
pexels-photo-984949そして往々にして飼い主さんに浴びせられるのが、「モルモットごときに」という言葉と態度です。
「モルモットなんかにそんなにお金を使って」
「え、モルモットって獣医さんに行く必要があるの?もっと元気な子を買えばいいじゃない」
「もっといいお金の使い方ないの?」

などなど、飼い主さんが周囲の方から投げつけられた心無い言葉の例は枚挙にいとまがありません。

実際に口に出す人もいれば、態度で示す人もいます。
時には、家族や親しい友人からそのような態度を示されることさえあります。

当然、孤立します。辛くなります。被害者意識が頭をもたげます。冷静に判断することができなくなります。
ちょっとでも批判めいたことを口にされると、逆上してしまったり、頭が真っ白になってしまったりします。
そして、少し回復の兆しが見えたと思ったら、すぐ悪くなるモルちゃんにフラストレーションをためることにもなります。

pexels-photo-935777モルちゃんも飼い主さんがイライラしていることを感じて(群れ動物であるモルモットは、驚くほど飼い主さんの気持ちを読み取ります)萎縮します。

神経質な子であれば、それが原因で体調が悪化することも間々あるようです。

飼い主さんは、良くなってくれないモルちゃんにまたイライラします。

イライラする飼い主さんを見て、家族や友人はもっと辛い気持ちになります。
大切な人が悩んでいるのを見て、「モルモット「なんか」に必死になっているから」と、モルモットを責める気持ちを持つ人もいるでしょう。
誰もハッピーでなくなります。

【毎日が100点じゃなくてもいい】
pexels-photo-325265では、どうすればよいのか?
正解は恐らくないのでしょう。
もしくは、正解はそのモルちゃんとその飼い主さん(そして恐らくは獣医さん)とのかかわりの中で、見つけていくものなのだろうな、と思います。

しかし、私ども自身のある意味での「正解」は、2年前に我が家の先住の命を救っていただいて以来ずっとお世話になっており、病気の動物やその飼い主さんと向き合う上で多くのことを教えてくださっている、我が家のかかりつけクリニックの院長先生に教えていただいた理念…哲学であると思っています。

「楽しいこと、悲しいこと、辛いこと…動物家族と一緒に過ごしてください。
飼い主さんの温かい気持ちが、動物たちにとって何よりもうれしいものです。」

pexels-photo-573241生きていればいろいろあります。
体調が悪い日もあるし、何となく気分の良くない日もあるでしょう。それはモルモットも同じことです。

毎日が100点じゃなくてもいいんじゃないでしょうか? 60 点の日があっても、20 点の日があってもいい。そんな日もある、と思えればいい。
今日も生きていてくれる、一緒に過ごしてくれる。
その事実そのものに幸せを見つけるマインドセットであれば、前の日や一年前と比べて暗い気持ちにならずにすみます。

【悲しい日も、楽しい日も、すべて「動物と暮らす」という経験】
pexels-photo-787942明日は30点かもしれないし、80 点かもしれない。
アップダウンがあっても、良くない日があっても、悲しい日があっても、それも含めて『動物と暮らす』という体験として受け入れる。
それが「モルモットと向き合う」「モルモットのすべてを受け止めて暮らす」ということなのはないのでしょうか。

心を持たない機械や道具でさえ、「何となく調子の出ない日」というものはあります。
繊細な体と神経質な心を持ったモルモットならなおさらのこと。
どんなに大切に思っていても、人間の思い通りに動いてくれるものではありません。

そして、モルちゃんは好き好んで病気になるわけではありません。
はしかや帯状疱疹、水虫、ヘルニア、アトピーになる人が喜んでそれぞれの病気になるわけではないように、病気はなるときにはなります。

モルモットの場合、飼養環境が悪いせいでかかる、もしくは悪化する病気も確かにありますが、遺伝性の病気や、中高年になれば罹患しやすい病気にかかるかどうかは、ほとんど運と確率の世界です。
別に飼い主さんを批判しようと思って病気になるわけでも、悪化するわけでもありません。

【最善を尽くす、でも予想外のことも受け入れる】
もちろん正しい知識の取得、病気にかかりにくい飼養環境の整備、モルモットの医学的知識が豊富な獣医さんへの通院などで、「より元気に過ごしてもらえる環境の整備」はできるでしょう。
しかし生き物ですから、病気になる率を完全にゼロにすることはできません。

pexels-photo-1038727であるならば。
発病までは、病気を発症する可能性を最小限に抑えることを目指し、定期的に通院しつつ、モルモットに適した飼養環境で飼育する。
発病してからは、早期治療でできるだけ楽に回復してもらえるように尽力する。
そして慢性疾患になったら、状態のアップダウンも含め、一緒に過ごせる日々を「贈り物」として考え、1日1日を大切に過ごす。
そのように過ごすことが、飼い主さんもモルちゃんも一番心穏やかに過ごせる方法なのではないか、と今は思います。

pexels-photo-934718モルちゃんにとって最善の選択ができるように、信頼できる獣医さんとしっかり日頃からコミュニケーションを取っておくこと。
体調管理に毎日しっかりと時間を割くこと。
エンリッチメントを大切にし、適切な運動や食事が取れるような環境で飼養すること。
自分のモルモットの性格を把握し、最もストレスの少ない方法でケアする方法を模索すること。
そして、「あまり良くない日」があったとしても、絶望するのではなく、「今日は20点だったけど、明日は60点かもしれない」と思えるようにすること。

pexels-photo-28773赤い糸と呼ぶか、ご縁と呼ぶか、運命と呼ぶか、必然と呼ぶかは人それぞれでしょう。
でも、どんなモルちゃんも、不思議な偶然を重ね、飼い主さんの手元にやってくるはずです。
世界にたったひとつの偶然に支えられた、かけがえのない絆です。

辛かった思い出、苦しかった思い出で塗りつぶしてしまわないように、どんな真っ暗な中にも、愛モルちゃんの愛らしさ、ちょっとしたしぐさに笑顔を浮かべる瞬間が作れるように、日々を過ごしていきたいものです。
私どもも及ばずながら、そんな生活のお手伝いができるようになれたらと願っています。

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